おネエとお姉は意味が違う。問題の本質は川本町の軽率さである。
辞書を引くと、オネエとは「おかま」もしくは女子の心を持った男のこと、または、そのようなキャラクターのこと。オネエ系ともいう、と定義されている。
そしておネエたちが使う言葉、おネエ言葉は、ウィキぺディアによると、昔、東京の銀座にあったゲイ喫茶「ヴランスウィック」で使われたのが起源だそうだ。その店に常連客として通っていた吉野某によれば「ねぇ、お前さん」など歌舞伎の女形の言葉から取り入れられた、という。
ただ、すべてのゲイ男性が使うわけではなく、むしろオネエと混同されるのを嫌がるゲイのほうが多いそうで、オネエ言葉を使うゲイはきわめて少数だという。そして、心の性が女性で身体の性が男性であるトランスや性同一性障害の人たちの多くもオネエと混同されることを嫌がる、というか抵抗感をもつ。
調べてみると、もともと、新宿2丁目などのゲイコミュニティーやゲイ当事者のなかでは、女装しないゲイのなかで、女性的なゲイ、オネエ言葉を使ったり、女性的なしぐさをするゲイだけをオネエと言っていたそうだ。それが、2006年日本テレビ系「おネエMANS」が始まったあたりから、おネエはゲイと同義語で用いられるようになったのだという。しかし、ゲイの多くは、男性的でありたいと望んでおり、女装したりおネエ言葉を使ったりはしないのである。男性としてのアイデンティティを受け入れている多数派のゲイのなかには、おネエと混同されることを不快に感じるものいるそうだ。
そして、お姉系という言葉もある。こちらのお姉系は、日本における女性ファッションの傾向のひとつのこと。ギャル系よりも年上の女性が行なうファッションのことである。たとえば、黒髪か茶髪、ロングブーツかミュール、ミニスカートやタイトスカート、ストレッチ素材のシンプルなスラックス(いわゆる美脚パンツ)、コンサバファッションをベースに華やかさやセクシーさを強調したファッションである。神戸系ファッション、OL系ファッション、丸の内系とも呼ばれていた。コンサバファッションとは、保守的なファッション傾向のことで、衣服、文化の伝統を重視したエレガントで主張控えめな装いのこと。対義語としては革新的、アバンギャルド、と言った言葉があり、それらは、しきたりには囚われないファッション様式のことです。
したがって、おネエとお姉は読みは同じでも、意味するところがまったく異なるのです。
さて、過日、川本町のある人物から、文化事業としてLGBTを支援したいが、今回企画しているイベントの集客がいまひとつである、とのことで、当方に公演の後援をメールで依頼があった。
メールに添付されていたチラシをみて、わたしは愕然とした。トランス女子をピエロ扱いしたような写真に不快感を感じ、チラシのキャッチコピーにも抵抗感を覚えた。主催者でありメールを送ってきたものに電話すると、インパクトのあるものにしたかった、という。あとでわかったことだが、このイベントに出演する側からの希望だったそうだ。
企画段階から、同町教育委員会の一部からは懸念もあったと聞くが、川本町、同教育委員会、同観光協会は軽率である。
チラシのキャッチコピー、写真に関して、同町教育委員会を通じて苦言を呈すると、主催者側はそれをクレームと受け取ったのだ。公演の後援を依頼し、本当に、LGBTの理解をと考えていたのなら、どこを修正すればいいのか、と聞いてくるのが礼儀というものだ。
まして、こちらの苦言をクレームと受け取り、お前の言うことなど聞かない、というような傲慢さは川本町職員としてどうかと思う。
イベントを成功させたかったら、もっと謙虚に、教えてください、という態度も大切である。
ポスターやチラシのコピーや写真が原因となって、たとえば、学校などで「あいつ、おネエじゃないか」とか「お前、おネエみたいだな」と言ったとたん、言葉は一人歩きを始め、ハラスメントやいじめに発展していく可能性もあるのだ。ハラスメントやいじめの多くは、面白ければいいという短絡的な発想で作られたテレビ番組などが原因となることがほとんどである。
仲間内のおもしろければいいじゃん、という発想で、LGBTを利用して町おこしをしようというのは浅はかである。人権はエンターテイメントではないのである。
まあ、それもこれも、5~6年まえに、川本町長に対して、LGBTに関する職員研修のお願いにいったが、そのあと何の音沙汰もなかった、というところに問題があるのだ。
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